RIDGE RACER V


・斎田 栄一((株)ナムコCS開発部係長)

・三小田 晋久((株)ナムコCS開発部)



(要約)

斎田: ソフト的には完全にPS2を想定して作り始めたものですね。

三小田: これは「R4」が終わってしばらくしてからの話なんですが、リッジレーサーというナムコのタイトルを
      これからどうするか?と考えていたときちょうどPS2の話があって、そこから制作はスタートしました。

斎田: はっきりした具体的な時期というのは難しいんですが、時間的には長いですね。そもそも研究は
    ずいぶんしてましたから。どこからが新リッジの開発なんだ?って言われると難しいところです。
    基本的に「エンタテインメントとしてレースゲームをどう面白くするか?」ということを考えてますね。
    だから今回もそういった部分を踏襲した上で、リッジの特徴である 「ハイスピードで疾走できる爽快感」
    といった特徴を伸ばしていきたいと考えてます。また、PS2ではハードスペックが向上したので、
    例えば秒間60フレームで描画できるようになりました。それによってスピード感が増したなど、色々な
    特性が加わりました。それらの面白い部分を伸ばしたいですね。

三小田: 車という題材を用いているため、他社のグランツーリスモ等と似た部分はあると思いますが、
      根本的な方向性はやはり違います。いわゆるシミュレータでは、実際の車の挙動に合わせて
      細かい部分を作り込んでいき、ちょっとセッティングを変えれば乗り味が聾わる…っていうのを再現
      できると思うんですよ。だけど「リッジ」についてはそういう要素をきっちり作りこむことよりも、多少
      デフォルメしてでも「走ってて楽しい」という方向に全てを持っていこうという意志がありますので…
      そういう意味では、今回も最初からリアル路線を目指してはいないです。特に強調したいのは
      「気持ちがリアルになれればいい」という点ですね。

斎田: PS2になって、まずプログラム的な部分で言うと、処理速度が上がった分、高度な計算もできますし、
    表示ポリゴン数も多くなってます。また画質的にもアップして解像度も上がってます。単純に言うと、
    解像度と処理能力が上がった結果、絵は格段に綺麗になってますね。

三小田: 以前はできなかった細かい計算が簡単にできるようになったので、制作面でも楽になったと感じる
      ところはあります。ゲームショウでご覧になったと思いますけど、例えばドリフト時に煙が上がるシーン
      や火花が散る場面などの計算は非常に楽になったので、そういう要素をふんだんに盛り込める。
      今までのリッジシリーズと比べたら、迫力は段違いだと思います。

斎田: ゲームが2Dから3Dになったとき、ごまかし方が難しくなったというのはすごく感じてたことなんですよ。
    絵は綺麗になっただけ本物らしくなるんですが、動きに嘘はつけない。あとは味つけの問題なのかな
    とも思うんですが、例えば映画でも「本物はこんな動きしないよ」ってものがある。ああいうのと似てる
    のかなって思っちゃうんですよ。何を第1義に考えるのか?というところで、ウチでは面白さをとる。
    全部を一律にリアルにするよりは、何が一番印象に残るかっていうところをピックアップして、そこを
    重点的に残す。そこをデフォルメしてより面白くなるとか、迫力が増すんだったら、デフォルメすることも
    辞さない、ということです。

    実際、現在作っていても、できることの頂点が見えないから大変なんですよ、正直なところ。
    作れば作るほど良くなるし、色んなアプローチがある。このやり方にはこれがベストかもしれないし、
    こっちかも?っていう状態です。これはPSと同様で、PS後期になって技術力が上がり、あれだけゲーム
    が進化Lたのと同じように、何年かかけて進歩していくことだと思いますよ。

    マスコットキャラクターが深水藍に変更したのは、PS2になったので新キャラで心機一転図ろうという
    意気込みのあらわれですね。

三小田: 今まではレンダリングしてムービーという形で出してましたけど、今回はリアルタイム演算で
      やってますので、その辺での迫力の違いやきめ細かさは優れているだろうと思ってます。
      オープニングはまだ検討中なんですが、基本的には以前と同じような形で、あとはゲーム中で
      どういう形で絡められるかを考えているところです。

斎田: ムービーをゲームショウでも流しましたが、あれは開発機上で動いているものなので、完成形では
    ないです。構成なども検討中ですし、まだ作り込んでます。

    ゲーム制作という根本では、PS2になっても変わっていないと思います。しかし制作ツールなどは
    作り直さないといけないし、PS2に合わせた作りをしないといけないですね。それで方法論が変わった
    という部分はないんですが。むしろ、変わったとすれば考え方かな。制作時にどこに重きを置くかと
    いったとき、今までのPSでは制限があったところ、具体的には煙の半透明やパーティクルの処理などが
    多量に行なえるようになったので、今度は制作上でどこに力を割いていくかを考えるようになりました。

三小田: 先ほどの「高速ドライビング」に表わされるような「走って楽しい」ことを再現する点ですね。
     細かい仕様はまだ完全に決まっていないことも多く、お話できないところもあるんですが、
     基本的には自分が一本の道筋に沿って成長していくというより、もっと自由に遊べる感じのシステムを
     目指して作ってます。

斎田: 言うなれば原点回帰ですね。R4からの続編という流れよりは、リッジの新しいもの、その上のものって
    いう感じです。リッジレーサーという製品の勢いはそのままに、全てが一気にレベルアップした、
    そんな感じです。

三小田: いずれにせよハイスピードの中で車を乗りこなしているという雰囲気をもっと強く出したいと思って
      ますので、そういう意味では初代リッジに近いといえば近い、といえますね。
      自分が本当にその世界の中にいるように感じられるっていうことを目指す意味で、実は「実在感」を
      テーマに掲げて作ってるんですよ。例えば今回、舞台は1つの町なんですが、その中に様々な
      コースがあって、何度も走るとその世界の姿が次第にわかってくる。そういう、今までゲームでは
      あまり味わえなかったような仮想空間の中での実在感を表現したいと思ってます。
      あと、車という道具を使ってどういうふうに遊べるか?という意味での幅を広げる仕掛けを盛り込んで
      いこうかとも考えてます。さらにもう1つはBGM。今回もノリを良くして、音楽ファンでリッジをあまり
      知らなかった人でも買いたくなるようにしていきたいと考えていますよ。

                                                        (1999)