Rez


・水口哲也((株)ユナイテッドゲームアーティスツ代表)



(要約)

 多くの人が本能の中に持っているけど、ちょっと眠っていて、ちょっと隠れているもの。
これをゲームを通じていかにして引きずり出すか、ということを僕らはすごく考えて作ったんです。
それに反応してくれた人が、楽しさとか気持ち良さをそこから引き出せるようなものを作りたかった。
たとえばRPGだったらドラマ感や冒険感、レーシングゲームだったら走ることの爽快感や1位になることの
達成感など、ゲームの向こう側には色々なものがあります。その1つに、今回僕らが「Rez」で提示したかった
ものがあるんです。ゲームの未来に、こういうのもアリかなと。

 昔のゲームには、「初めての快感」を提示しているものがいっぱいありました。
基本的なところは今も変わってなくて、時代が移り変わっても、「Rez」が持ってるエネルギーがあるとすれば、
そのエネルギーに感応して、多くの人が"初めての快感"に目覚めて欲しいと思っています。
過去の名作を振り返ってみると、出た当時は賛否両論、どっちかっていうと否定の方が多かった。
あとで色んな分析が行われて、少しずつみんなの意識が変わってくるというのがあったと思います。

 ゲームだけではなく、全ての遊びとかエンターテインメントには文法があると思うんです。
最初は「ん?なんだこれ?」って思うんですが、だんだんルールとか仕組みがわかってきて。
すると、わかった途端に自分の中で新しい化学反応があって、そのときが面白さに変わる瞬間、何かに
気づいた瞬間、何かを発見した瞬間なんです。その文法があるものって本当に"いいもの"だと思うんです。
だから、プレイした人の中で化学反応が起こるような新しい文法を作れないかというのをかなり考えました。
スタッフの共通理解ができるまでは、本当に"死闘"でしたけどね。

 実はテレビに出てたシーンの間間にはかなり濃密なミーティング風景が存在してます。
みんながお互いの感覚を共有するのにものすごい時間がかかって…今だからみんなはその感覚がわかるん
ですが、それまでは、みんながバラバラなようで、同じようなことを言ってて。それをプログラムに置き換え、
迷いのないものにすること、その過程が一番時間がかかったし、苦しかったですね。でもみんなが同じ感覚に
気づいた瞬間、それを感じさせるプログラムができあがった瞬間というのがあって、そこからはみんな楽しく
なっちゃって、あっという間に終りました。

  だいたい通常のゲームは、プリプロダクションのときに、言葉にしやすいものを選ぶんですよ。
ストーリーだとか、キャラクターだとか。そうすると人間にとって最も大事な、本能とか感情の深い部分には
なかなか行きつかず、表層的なところをサーっと舐めて終わりというケースが非常に多くなるんです。
だから、多くの人間の体験とか本能とか欲求などの議論を相当繰り返した挙げ句、出来あがってきた『Rez』
は、実際は広くて大きな人間の、深層にある一部分を抽出したという感じですね。

 誰かが言ってたんですよ。この感覚は「自転車みたい」と。自転車に乗れる前は難しく考えてるんだけど、
乗ってみると「なんでこんなに簡単なことが出来なかったんだろう」という感覚。"自分の体に翼が生えたみたい
に楽しめるようになる感覚"に似てるねって言った人がいました。
 『Rez』も、そんなに難しいことはないと思うんです。あんまり変に期待が膨らんでしまっても…逆に、もし
ゲームに先入観のある人がいるなら、シューティングゲームとしてやって下さいと。この前、友人が遊びに
来てプレイしたんですよ。最初は、「音楽入ってこないよ」とか「これシューティングじゃん」とか言ってたんです
が、15分から20分ぐらいプレイしてから、「あ、なんか音か聞こえ始めた」と言いました。それがゲームに慣れた
時間で、まず音が、さらに振動が体に入ってきて、体の中でミックスされて…そうなるともう止まらなくなっちゃっ
て。結局彼は3時間ぐらいやってましたが、そういうものだと思います。

 今までバラバラだったものが重なる瞬間、それに尽きます。「Rez」という言葉は、今回「Rez」で味わって
ほしい体験の代名詞に近いんです。バラバラだった音や光、それと体から入ってくるものが、自分の中で
ゆるやかに化学反応を起こしていく感じを、"resolute"っていう言葉、固まっていく、融合していくという言葉に
込めてるんです。その部分を感じて欲しいですね、ぜひ。

                                                   (2001)